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「今の所はとても順調だよ、リートくん!」
数日ぶりに謁見したリカルド様は、開口一番に嬉しそうに告げてくる。
「効果が出ている感じ、ですか?」
「ああ……新たな感染者の数は着実に減ってきてるよ。もちろん感染源は一つじゃないから、新規感染ゼロとまでは言えないがね。だが、やはりあの公衆トイレが一番の感染源だったのは間違い無いだろうね。君のスライムによる清掃には、しっかりとその予防効果が出てきているようだよ」
僕が”動物の糞”好きの【ノービススライム】のノビーちゃんを公衆トイレに設置したのは3日前のことだった。
設置したとは言っても、僕がしたのはトイレの中に下ろすための特殊な容器に、ノビーちゃんを入れるところまで。
あとはセバスさんが手配してくれた業者の人が、トイレの中へ丁寧に下ろしてくれた。
「それは良かったです。僕の職業『スライム繁殖師』が役立ったなら、それより嬉しいことはありませんから」
「ああ、君の職業は一見変わった風にも聞こえるが、とても役にたつ職業だと思うよ。まだまだ他にも使い道はあるんじゃないかな?」
「そう、だといいんですけど……」
ラッキーなことに、いくつかの使い道が見つかり始めてきたスライムたち。
”糞好き”の【ノービススライム】はトイレ掃除、というか排泄物の処理に使えるってことがわかったし、”毒好き”の【ポイズンスライム】は毒の判定に使うことができた。それに、硬さがうりの【ゲルスライム】は、クッションに最適の柔らかさだった。
僕の手のひらの上でふるふると震えるスーパーレアんお【インテリジェントスライム】のスラくんに至っては、無限の可能性が秘められているのかもしれない。
『スライム繁殖師』をどう使っていくかってことを、もっと積極的に考える時にきているのかもしれない。
「ああ……さて、今日君に来てもらったのは、今回の件の報酬と、今後の予定について話しておこうと思ってね」
「はい」
「まずは、今後の予定。もう1匹の【ノービススライム】は、あと数日様子をみることにしよう。このまま流行病の状況が落ち着くようであれば、最初の予定どおりこの屋敷のトイレに使わせてもらおうと考えている」
確かに感染さえ落ち着いてしまえば【ノービススライム】を取っておく必要はない。
予定通り公爵様の屋敷のトイレに使うのがいいだろう。
「わかりました。どのくらい様子を見ますか?」
「あと数日……3日も見て、新規感染が減り続けるようなら問題ないだろうね。君はこれまで通りにここに滞在してくれればいい。シルヴィアも喜ぶだろう」
『聖銀の鷲亭』を出てからは、ここ公爵様の私邸に泊めてもらってる。
その間は年の近いシルヴィーに遊んでもらってることがほとんどだ。
「報酬の話に移ろう……まずは、スライムの『黄金の鷹亭』への貸出料は月40000ピノだったね?」
「はい。最初は30000ピノだったんですけど、思った以上に効果があるってことがわかって、マッツさんたちに増額してもらいました」
「ああ、私もそれには同意するよ。私個人の気持ちとしては数十万ピノの価値があるとは思うのだけどね、他の君の貸出先と大きくバランスを崩すわけにもいかないだろう。ひとまず『黄金の鷹亭』の40000ピノに合わせて始めることにして、様子をみながら増額していくということでどうだろうか?」
「はい。僕はそれで十分です!」
「では、庶民街の公衆トイレと公爵邸のトイレで月80000ピノだな。セバス、毎月滞りなくリートくんに支払われるように準備を整えてくれ」
「畏まりました」
やった。
これで『黄金の鷹亭』と合わせて月120000ピノの稼ぎだ。
まだ普通に働いてる人の初任給にはまだまだ及ばないけど、『スライム繁殖師』で稼ぎ始めて1年もたってないことを考えれば、上出来と言っていいだろう。
後1・2件貸出先のトイレを見つけられれば立派に暮らしていける。
「それじゃ、続いて今回の感染症予防の報酬の話といこうか」
「はい……」
「感染症というのは人的な被害だけでなく、経済的にも甚大な影響が出るものでね……正直、リートくんの今回の手柄を見積もるのはなかなかに難しいものなのだよ」
なるほど。
病気の予防って、人を守るってこと以上に意味があることなのか。
勉強になるな。
「それでも、公爵からの直接依頼の達成に出せる報酬には、目安になるいくつかのランクがあってだね……公爵領第一等恩賞はこのラインベルト公爵領に破滅的なダメージを残すような未曾有の危機を解決するような活躍をした場合に与えられる。例えばドラゴンなんかが攻め込んで来たのを討伐・撃退したって感じだね。この場合は被害の程度に応じて一億ピノからの報奨金が支払われることになるんだ……それから……」
なるほど。
第二等は、公爵領に継続的な被害をもたらすような事態を解決した場合。
第三等は公爵領の安定を一時的に脅かす脅威を取り除いた場合。
第四等は人々の生活を脅かす原因を排除した場合。
第五等は人々の生活を劇的に改善させる働きを見せた場合。
……と言った感じだろうか。
「我々の考えでは、君の今回の活躍は第四等の最上位に相当すると思ってるのだが……」
人々の生活の改善をしつつ、伝染病の根を取り除いたって感じかな。
そこまで危険な病気って感じではなかったみたいだし、公爵領の安定を脅かすってほどのものではなさそう。
「はい、納得できる評価だと思います」
僕がそう告げると、リカルド様が小さく頷く。
「よし、それではリート君にはラインベルト公爵領第四等恩賞を与えることにする。褒賞のメダル、そして金一封の250万ピノを贈呈しよう」
「にっっ、にひゃくごじゅうまんピノっっ!?」
僕の出した大声に手に持ったスラくんがふるふると震える。
「なんだ、少なすぎるかね?」
「いえ、ぎゃくっ、逆ですっっ!?」
250万ピノと言ったら普通に暮らす1年の生活費が余裕でまかなえる。
そんな大金が1度に手にはいる……?
「そ、そんな大金……」
「君はそれだけの大きな仕事をしたのだよ。誇って受け取るがいい」
「そ、そうですか。わかりました。ありがたく頂戴いたします」
もちろん公爵様の恩賞にノーと言えるわけも無いのだけど。
「よろしい……私はリート君ならすぐにそのくらいのお金を自分で稼げるようになると思うよ……」
「そんなことは……」
無いと言いたくはなかった。
変わった職業だと思ってた『スライム繁殖師』。
思いのほかに色んな使い道のあるこのスライムたちとなら、人の役に立つ様々なことを達成していけるはず。
今ならそう信じられるから。
「いえ……頑張ります!」
僕の気持ちのこもった言葉に、公爵様は優しく頷いてくれたのだった。
ーー No. PD

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