4−5 スライムが僕に教えてくれること

 

 

>>次話

>>目次

>>前話

**********

 

 

目の前に広がるのは群生してる数多くの薬草だ。

でも……

「……ふうっ、この群生地もモンゴロ草ってことなんだろうけど……うーん、やっぱりここも取れそうなサイズのがほとんどないなあ……」

そのサイズはこぶりなものがほとんどで、それらを摘んでいったならきっと受付嬢のアリスさんに怒られてしまうことだろう。

文句を口にしつつも、採取して良さそうなサイズのモンゴロ草だけを何本か採取する。

「モンゴロ草の群生地さえみつければ、これで稼げるようになるかと思ったけど……モンゴロ草の群生地は定期的に取りに来る人がいるんだよな。まあ、そりゃそうだよね……」

あれから幾つかのモンゴロ草の群生地は見つけることができた。

まあ確率で言えば5分の1なわけだから、獣道から外れない近場でも見つけるのがそう難しいわけではないのだ。

だけど、その段階に来て新たな問題に直面することになった。

そう……群生地があったとしても、手頃なサイズのモンゴロ草は既に他の冒険者に摘まれてしまっていることがほとんどなのだ。

おそらくモンゴロ草の依頼を定期的に受けるタチーナの冒険者たちが、これらの群生地を定期的に刈り取っているってことだろう。

同じくらいのタイミングを見計らって先に刈り取るに来るってことはできるかもだれど、他の冒険者と無用な諍いを起こしたくはない。できることならば、自分だけのモンゴロ草の群生地を見つけたいところだ。

「ってなると、獣道からもっと奥に行くしかないってことだよなあ……このあたりに薬草が群生してるのってミルカ池の影響だろうし、どのくらい離れても薬草が群生してるものなのかなあ……?」

僕はこれまでに試していた獣道の近くを離れ、さらに森深くへと足を踏み入れてみる。

足元の悪さが然程悪化するわではないけれど、踏み込めば踏み込むほど当然のように自然は深くなる。

時折足元を取られたりしつつも、少しずつ先へと進んでいく。

「お……おおっ、ここは、新しい群生地だね。かなり大きめだな。ここは刈られてないみたいだけど……」

ちょっと開けた場所に見つかった薬草の群生地は、とりあえずう手つかずの状態のようだ。

これがモンゴロ草だったら嬉しいんだけど……

「あれ、なんか草がふるふる動いてるね……って、あれスライムか。そう言えばアリスさんが、このあたりにもスライムがいるって言ってたよな……」

薬草の下でスライムがふるふると揺れて、薬草の穂先を動かしている。その身体の中には数本の薬草が埋まっているのが見える。

「薬草まで食べるんだね。ほんとに、スライムたちって雑食だよねー。どれ……『スライム鑑定』」

ーーー

【パラライズスライム(UC)】

名前:

状態:中立

性別:♀

年齢:1歳

好物:ムングル草

モンスタースキル:《溶解液麻痺弾》

なんの変哲も無い単細胞生物。特に意思もなく好きな枯葉を求めながら生きている。スキル《溶解液麻痺弾》は、弱い麻痺効果を付与することができる。

ーーー

 

「……へえ、パラライズスライムで、麻痺効果のある溶解液弾か……それって、もしかしたら戦闘にも使えそうじゃない?」

弱いとはいえ、麻痺効果があるってのは戦闘に有利になりそうな効果に思える。

僕は……なんとなくその場の薬草を切り取って、パラライズスライムの身体の上に落とす。

「おお、食べてる食べてる…………」

すると、パラライズスライムは僕の落とした薬草を身体に吸収して消化を始める。

「…………ん?」

……あれ、何かが引っかかるような……?

「……この子がパラライズスライムで……ムングル草が好物で……ここの群生してる薬草を食べている…………って、あぁぁぁっっ!!!!!」

思いついたことを試すために、どんどんとムングル草をパラライズスライムに投入して友好度をあげる。

「パラくんっ、ちょっと一緒にきてっ!」

『スライム鑑定』で友好状態になったのを確認したパラくんを抱えて僕は他の薬草を探す。

「ここの草は……食べない」

「ここのも、食べない……」

「あ、ここのは食べたっ! じゃあ、これはっ……」

僕はその群生地の薬草を一本刈り取ると、他の草と混ざらないように収納する。

「よっし、早く確認したいし……今日はもう街に戻ることにしようっ」

僕は足早にタチーナの街へと戻り、冒険者ギルドに走り込む。

「アリスさんっ!」

「どうされたんですか、リートさん? そんなに慌てて」

「あのっ、この薬草がムングル草かどうか確認してもらうことってできますか?」

「モンゴロ草ではなく……ムングル草ですか……?」

「はい!」

「構いませんが……少々お待ち下さい」

アリスさんは訝しそうにしながらも、僕の手渡した薬草を奥にいる素材鑑定の担当者へと持っていってくれる。

しばらく待っていると、アリスさんがカウンターへと戻ってくる。

「……確かにムングル草でしたね……?」

「そうですかっ! わかりましたっ!」

これがムングル草だってわかるってことは、僕が薬草依頼で稼ぎまくることが可能ってこと。

そのためには、まだピースがたりない。

あれと、あれと、あれを集める必要がある。

「……ありがとうございましたっ! また来ますっ!」

「はい……お待ちしております……?」

不思議そうな顔をしているアリスさんを残し、僕は冒険者ギルドを駆け出したのだった。

 

 

>>次話

>>目次

>>前話

 

ーー No. PD

コメント

タイトルとURLをコピーしました