1−2 拝啓お父さんお母さん、リートは元気にやっています

 

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「「ごちそうさまでしたっっ!!」」

マーシャさんの特性ミートソーススパゲッティをメグと同時に食べ終える。

「二人ともいい食べっぷりだねえ……リート、それじゃ私は食堂の手伝いに戻るけど、ゆっくりしてくんだよ」

どことなくメグの面影を感じさせる綺麗な笑顔を見せるのは、メグの母親のマーシャさんだ。

僕の第二の母親と言って過言でない彼女は、この宿屋『黄金の鷹亭』の看板女将でもある。

「ありがとうございます、マーシャさん。でも、今日は僕はこれで帰ります……」

「あら、今日は泊まっていないかないのかい? うちの宿屋はいつだって数室部屋が空いてるんだから、遠慮することはないのよ? ま、部屋の準備の方はいつも通りに手伝ってもらうがねっ」

マーシャさんの言う通り『黄金の鷹亭』に泊めてもらって、翌日に宿のベッドメイクなんかを手伝ってから帰るってことはよくしている。

だけど……

「ありがとうございます。でも、たまにはうちの片付けとかもしないといけないので……」

「それも、そうだね……リート、それじゃ、また明日くるんだよっ!」

「はいっ、マーシャさんっ! メグ、それじゃまた明日ー」

「うん、またね、リート!」

ニッコリと笑うメグに見送られて、僕は『黄金の鷹亭』を後にしたのだ。

 

 

 

『黄金の鷹亭』から外に出ると、日も完全に暮れていてもう真っ暗になっている。

だけど、松明照明の設置されているこの街のメインの通りには、それなりの人通りが残ったままだ。

僕はそんな中をスタスタと歩き家の方向を目指す。

犯罪0とまでは言わないけど、険しい山と立派な街壁に囲まれた宿場町タチーナの治安はさほど悪くない。

大きな問題が起こったのなんて、7年前のあの事件……運悪くこのタチーナの街が魔物氾濫の通り道になってしまったあの日くらいだ。

「さて、ここからは走るか……」

大通りを抜けて人通りが少なくなったところで、僕は地面を蹴り始める。

もうすぐ夏になるとはいえ、日の落ちたこの時間はそれなりに涼しい。

気持ちのいい夜風を感じながら、僕は10分ほど走り続けた。

 

 

 

「はぁはぁっ……ついたー、だいぶ早く走破できるようになってきたな」

前は『黄金の鷹亭』からここまで20分くらいかかっちゃってたわけだけど、今はその半分くらいの時間で走りきれるようになっている。

それに、ほぼ全力疾走で駆け抜けてきたけれど、体の疲れもさほどじゃない。

着実に走力が上がってるのが感じられる。

「……ん、なんだ?」

家の外門を抜けて中庭に入ると、庭で何かが動いているのが見える。

僕の家はタチーナの山側の外れにあるので、たまに野生動物なんかが侵入してくつろいでることはあるんだけど、盗賊が侵入してるなんてことがあったら笑えない……

「……あ、なんだ……スライムかあ」

それは魔物の一種であるスライムだった。

スライムは魔物とはいっても基本的には人畜無害。

フニフニと動く粘液生物は、落ち葉やら、枯れ草やら、動物の糞やらを片付けてくれる益魔物として扱われているくらいだ。

たまに有害な特殊効果を持つ上位スライムもいるから注意はしないといけないんだけど、今庭にいるあいつは普通のスライムのようだ。

「……庭のお掃除、ありがとね」

スライムに声をかけると、わかってかわからずかスライムはふるふると表面を震わせたのだった。

 

 

 

「……ただいまー」

玄関の鍵を開け家に入った僕の声に、応えるものはいない。

真っ暗な家の中だけど、慣れた場所だ。

僕は迷うことなく自分の部屋へと向かう。

部屋に入りランプに火をつけると、部屋の片隅に置いた二つのモノリスへ近づく。

その前に置いたコップの水を新しいのに入れ替えながら……

「……父さん、母さん……今日もメグといっぱいトレーニングしてきたよ。今日はメグに勝ってね、勝率も結構いい感じになってきたよ。もちろんメグもいっぱい努力してるから、いつも勝てるってわけじゃないけどね……」

7年前のあの日に死んでしまった僕の両親に、今日の出来事を説明する。

戦闘系の職業『盾戦士』だった父さん、召喚魔法が使える『召喚士』だった母さん。

二人は魔物氾濫で逃げ惑う人々を助け続け……最後は力尽きて魔物の流れに飲みこまれてしまったそうだ。

まだ小さかった僕は、その日のことはよく覚えてはいないんだけど、二人が勇猛果敢に戦ってたってことはマーシャさんやマッツさん、それに街の人たちに何度も聞かされている。そんな二人は僕の誇りとする両親だ。

「……それでねっ、最近メグのことを見てると、なんだか心の中があったかくなるっていうかさ、ドキドキしちゃうっていうかさ……手を繋いだりするとすごく柔らかいし、甘くていい匂いがするしさ……」

そんな両親への近況報告は、いつのまにか訓練の話から、最近のメグに感じてしまう不思議な気持ちへと移っていた。

「……って僕なんで、こんなこと話してたんだっけ……まあメグのことはいいんだけどさ。それでね、父さん、母さん……僕も再来月にとうとう職業が得られるんだ。父さんみたいな戦士でもいいし、母さんみたいな魔法系の職業でもいいけどさ……父さんや母さんみたいに魔物に苦しむ人たちを助けられるようになりたいって思ってるんだ……そっちでも応援しててね……」

僕はそれだけ二人に告げると、部屋のランプを消してベッドへと潜り込んだのだった。

 

 

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ーー No. PD

 

 

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