3−5 魔王様で異世界トイレレベルアップ

 

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『トゥルーン……異世界トイレのレベルが10に上がりました』

火山の麓に呼び出した異世界トイレの前に僕は座っていると、そんな音声が脳内に流れる。

「おっ、やっぱりレベルが上がったかっ」

アシュリーの家では毎日のように異世界トイレを使ってたわけじゃないので、最近レベルは伸び悩んでいる。

つい最近1個だけレベルが上がって、9になったばかりだった。

今の異世界トイレはステータス表示にしたらこんな感じだろう。

 

異世界トイレ Lv.10

アップグレード個室: ベッドルーム、シャワールーム

装備:
【異世界モップ Lv.3】《斬撃付与》《魔断ち》《雷撃付与》
【異世界バケツヘルムLv.2】《属性攻撃無効》
【異世界ポーション水 Lv.2】《負傷回復・大》《スタミナ回復・中》《魔力回復・小》

スキル:異世界トイレ収納

 

レベル9のレベルアップのときは個室のアップグレードを選んだ。

アシュリーの別荘に住み始めていたので、攻撃力や防御力を上げる緊急性はあまりなかったから。

個室のアップグレードで、異世界ライフを充実させることを目論んだのだ。

そして実際にその目論見は当たった。

個室アップグレードでできたのはシャワールーム。

公衆トイレにシャワーって聞くと不思議な感じもするけれど、前世のユニットバスとかジムなんかのシャワールームを考えればまあそんなにおかしなものでもないだろう。

アシュリーの別荘にはシャワーはあるけど、この世界の一般的な宿屋や家庭は体をお湯で拭くくらいらしい。

これからずっとアシュリーの別荘に引きこもるってわけにはいかないので、これからの異世界生活を考えるといつでも使えるシャワールームがあるのはとても助かる。

お湯で体を拭くだけの生活なんて、日本から来た僕にはちょっと耐えられない。

 

「……しかし、ついにレベル10かっ……ってことは、やっぱり新しい人がトイレを使うとボーナスレベルアップがあるってことだな……しかし、超絶美少女で魔王様でも普通にトイレってするんだな……いや、当たり前なんだろうけど、なんかこう……」

アシュリーが今この瞬間に致していたと思うと、なんだか不思議な感覚を覚える。

『レベルアップ特典を選んでください

1 Lv.10限定特典

レベルが5になった時に見た記憶のある文面だ。

あの時は異世界トイレ収納ってコアスキルを得られたわけだけど……

「レベル10も限定特典なのか……これは期待できるかな……」

いつも通りに脳内で限定特典を意識するようにして選択する。

『Lv.10限定特典が選択されました。異世界トイレが拡張されました』

 

「……拡張? ってどういうことだ……?」

不思議な特典の内容に頭を悩ませていると……

「……これはっ、なんじゃあっっ!?」

そんな声が異世界トイレの中から聴こえてくる。

僕は異世界トイレの中に入りアシュリーに声をかける。

「どうしたんですか、アシュリー? ……あ、なるほど。拡張って、こういうことですかあ」

手洗い場所とトイレの個室の間。

掃除用具入れのロッカーの横の壁に、今までなかったものができている。

「これは……上に登る階段ですね……」

「そうじゃな……って”拡張”ってなんじゃ?」

「レベル10に上がった限定特典が、異世界トイレ拡張って名前だったんです。中が広くなるのかと思ったら、階層が増えることになるとは……」

「なるほど、それでこんなところに階段ができたのじゃな……」

「はい……それじゃ、ちょっと、行ってみます……」

僕は恐る恐る狭い階段を登っていく。

なんだかドキドキはするけど、僕の異世界トイレ様だ……登った先に危険があることはないだろう。

十数段の階段を登りきると、奥へと続く入り口がある。

僕はその入り口から顔を覗かせる。

「これは……」

「だだっ広いトイレ……じゃな……?」

1階と同じ広さのある結構なサイズの空間。

その端っこに申し訳とばかりに洋式トイレが一つ付いている。ここがトイレであることを示すかのように。

このままだだっ広い部屋として使っても良さそうだけど……

「……レベルアップ特典に個室追加ってのがあるのはこれが理由か」

「個室、追加?」

「そうです。僕の異世界トイレがレベルアップする時ですが、特典に装備・個室のアップグレードの他に、個室の追加ってのもあるんです。きっと、この2階に個室を増やして、それからアップグレードすることで、いろんな個室が作れるってことじゃないでしょうか……」

「なるほどのぉ……お主のシャワールームも良い感じじゃし、きっと他にも便利な個室ができるんじゃろうな……」

「だと、思います」

ベッドルーム、シャワールームに続いて何が出るのかはわからないけど、暮らしを便利にできるものはたくさんある。

この異世界トイレと一緒なら、異世界暮らしもそう悪くはないものになりそうだ。

僕たちは一通り2階を探索したあと、外へと戻る。

 

トイレから出た僕たちの目の前にあるのはそびえ立つ火山だ。

「さて、いよいよじゃな……今回の目的地はもうすぐそこじゃぞ……」

僕とアシュリーは火龍の住む火山へと、足を踏み入れた。

 

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ーー No. PD

 

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