4−3 初めての冒険者依頼の受諾・薬草採取

 

 

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冒険者依頼表の貼られた掲示板をしばらく眺めていたのだけれど、僕だからこそできそうな仕事を見つけるというのはなかなか難しいもので……

「……というわけで、アリスさん、まずはオススメの薬草採取に挑戦してみようと思うのですが、詳細を教えてもらえますか?」

受付嬢のアリスさんに常設依頼・薬草採取の受付票を渡す。

「はい。もちろんです……この依頼はその名の通り薬草を集める依頼です。薬草はそのまま食べても回復効果がありますし、回復薬の原料にもなる貴重な素材です。ちょっとお待ち下さい……」

アリスさんは奥に下がると、一本の草を手に持って戻ってくる。

「こちらが目的の薬草、モンゴロ草になります」

「これは……普通の草ですね?」

「ええ……特徴的なのはここの葉っぱの根本がギザギザしてるところと、それから葉っぱの裏のこの部分がツルツルってしてるところになります……」

アリスさんが細く伸びる指の先っぽで、葉の後ろをさすさすと撫でる。

「……なるほど」

「……なのですが、一つ問題があります。こちらはムングル草と呼ばれる弱い麻痺効果のある有害草なのですが……」

彼女がそう言いながらとり出した草は、モンゴロ草と全く同じ見た目をしている。

「見た目が……まったく一緒ですね?」

「はい。葉裏のツルツルなどの特徴も全く一緒になりますので、見分けるには詳細な成分鑑定を行う必要があります。更にですが……弱い身体能力低下効果のあるマンガラ草、弱い睡眠効果のあるミンギリ草、弱い混乱効果のあるメンゲレ草も全く同じ見た目になります」

「それじゃあ、採取するときにその場で見分けることはできないってことですか?」

「はい……ですので、基本的にはこの形の草を見つけたらとりあえず採取してきてもらう、という依頼になってしまいます。薬草のモンゴロ草であれば、こちらほどのサイズなら1本500ピノでの買い取りになりますが、その他の草の場合ですと同じサイズで1本50ピノほどになってしまいます」

「うわー……結構違うんですね」

10本取れたとして5000ピノと500ピノじゃだいぶ印象が違う。前者ならその日の宿の代金が払えるけれど、後者では夕ご飯の代金がようやく払えるってくらいだ。

「はい。残念ながら、モンゴロ草以外の草はあまり使いみちがないのです。わかりやすい点としては、これらの草は同じ場所で群生する性質があります。なので薬草依頼を頻繁に受ける冒険者の方たちは、自分だけの薬草採取の場所を確保していたりします。そのため採取場の近くで他の冒険者の後をつけることはマナー違反とみなされますのでご注意ください」

「はい。わかりました……他に注意点はありますか?」

「はい、重要な点がもう一つ。こちらの草は根を残しておけばまた生えてくるものですので、根本から少し上の部分を切り取って上部だけを持ち帰るようにしてください」

なるほど。そうしておけば、また同じ場所で薬草が取れるってことだな。

「わかりました。草狩り用のナイフを持っていきます」

「そうしてください。それから、あまり小さな草も取らない方が良いですね。効果がイマイチですので、買取額も低くなってしまいます……あ、そういえば肝心なことを伝えていませんでしたね。薬草はどこでも生えているものではあるのですが、このあたりで多く群生しているところはミルカ池の周辺になりますが……ミルカ池はご存じですか?」

ミルカ池……聞いたことが有るような無いような。

「いえ……教えてもらってもいいですか?」

「もちろんです……ミルカ池に向かうには街の東門から出ていただくのがわかりやすくなっています」

東は……王都の方向だから……

「リトレに向かう方向の門ですね?」

「そのとおりです。リトレへ向かう街道を10分ほど進んでいただきますと、リダール山への細道があります。その道をそのまま30分ほど登っていただきますと、正面にミルカ池が見えてきます。道沿いですし、大きな池ですので見逃すようなことはないかと思いますよ」

確かに、聞いた感じたどり着くのに迷いそうな感じではないね。後はそのあたりで安全に活動できるかを確認しておけば問題なさそうかな……

「わかりました。ミルカ池の周りに危険なところはありますか?」

「はい。到着した地点から見てミルカ池の対岸の周囲には強めの水生魔物が確認されています。水属性の強力な魔法を使ってきますので、対応できる戦闘能力がない場合はそちらには近づかないことをおすすめします。ですが、ミルカ池に近づきさえしなければ、野生動物に気をつければ良いくらいです。その他に周辺にいる魔物はスライムくらいですので……」

へえ……

「スライム……が、いるんですね?」

「ええ……それが何か?」

「いえ……なんでもないです」

スライムがいるのは僕にとっては嬉しいことだ。まあどこでもいる魔物といえばそうなんだけど、いつもの裏山とは違うタイプのスライムがいるかもしれない。

いい種類のスライムが見つかったら友好度を上げて連れ帰ることにしよう。

「わかりました! ありがとうございました、アリスさん。今日はまだ時間が早いので、さっそくミルカ池に向かってみます」

「そうですね、今からなら十分日帰りができるはずですよ……頑張ってください、リートさん」

僕はアリスさんにお礼を言うと、初めての冒険者依頼に向けて冒険者ギルドを駆け出た。

 

 

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ーー No. PD

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