3−3 新しい仕事の可能性

 

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「ああ、これ……すごく美味しいですね」

「ニャろ? このお店【冒険者の台所】はお肉も魚も新鮮でソースも美味しいのニャ。うちの一番のお気に入りなのニャ!! あ、もちろん一番美味しいのはマッツさんの賄いニャけど……」

ナーニャさんに連れてきたもらった街の食堂。

僕が食べたのはタレを塗った鶏肉を焼いた料理。

表面はしっかりと、中はしっとりと。

焼き加減が抜群な鶏肉料理はとても美味しかった。

ナーニャさんが食べてる焼き魚も同じように抜群の焼き加減って感じに見える。

「……マッツさんは、今や公爵様に認められたタチーナ一番の料理人ですからね。黄金の鷹亭のレストランは僕にはちょっと高くて手が出ませんけど、賄い作ってくれるときはすごく美味しいですよね」

「そうだニャ。リートはもっと黄金の鷹亭に遊びにくるのニャ! その方がマーシャさんもマッツさんも喜ぶニャ!」

ナーニャさんが喋るたびに猫耳がぴこぴこと震える。

「そうですね……みなさんの気持ちはありがたいですけど、僕もスライムたちを養わないといけないので」

「ああ! あのポズちゃんとかニャ! それは重要な仕事なのニャ! うちもまた毒キノコ取ってくるのニャ!」

ポズちゃんにクビを救われたナーニャさんはあれから何かにつけてポズちゃんに餌の毒キノコを持ってきてくれたりしている。

「ありがとうございます、ナーニャさん」

「ニャ! にしても、リートの職業は意外と面白そうだニャ! 何も考えてなさそうなスライムと仲良くなれるなんて信じられないニャ」

リーニャさんが僕の職業について話を向ける。

「『スライム繁殖師』だから仲良くなれるのか、餌をあげてれば仲良くなれるのかはわかりませんけどね……まあ、スキルがないと仲良くなってるか確認しづらいですし」

「そうだニャ。ポズちゃんはうちからもキノコを食べてくれてるけど、仲良くなれてるかはわからないのニャ。毒付きの《溶解液弾》をもらうのは勘弁なのニャ!」

「はは……僕も一度普通のスライムから《溶解液弾》をもらったことあります……ところでナーニャさん」

「んニャ?」

ちょうどよくスライムの話になったので、聞きたかったことを聞いておくことにする。

「僕スライムたちを使って、何か仕事ができないかなって思ってるんですけど、何か困ってることとかないですか? 黄金の鷹亭でもいいし、他のところでもいいんですが……」

「そうニャア……うちにはスライムの使い方はわからにゃいけど、困ってることならいっぱいあるニャ……」

「はは……」

ナーニャさんは次々と仕事の不満点やら失敗談なんかを話し続ける。

ちょっとおっちょこちょいなところがあるナーニャさんの話は彼女のミスによるものが多くて、そのほとんどはスライムが何かできる余地のあるようなものじゃなかったんだけど……

「……一番嫌な仕事はトイレ掃除ニャ!」

「……トイレ掃除、ですか?」

「ニャ! うちは獣人族だから人よりも鼻が効くニャ! 仕事だからしょうがないけど、トイレ掃除はキッツイのにゃ……」

「そうですよね……」

この街のトイレは出した置いたものを貯め置いておいて、専門の業者に回収してもらうというのが基本。

うちでも黄金の鷹亭でも定期的に掃除はしてるんだけど、残念ながらその元々の悪臭は如何ともしがたい。

「でも、僕のスライムじゃ……」

それをスライムを使ってなんとかできるなんてことは…………………………あるかもしれないな。

ふと、とある1匹のスライムのことを思い出す。

「……もしかしたら、それ、なんとかできるかもしれません」

「ほ、ほんとかニャ? あの匂いをどうにかしてくれるなら、うちリートのためになんでもするニャ!」

「な、なんでもっ……」

年頃の猫人族女性であるナーニャさんの魅力的な体。

思わず彼女を上から下までツツっと眺めてしまう。

「うぅっ、ぶるっとしたニャ! そういうなんでもじゃないのニャ!!」

「そういうって……いや、ち、違いますよ。ナーニャさんのその猫耳と猫尻尾が気になって……」

彼女の女性らしい部分に興味がないかというと嘘にはなるけど、一番気になるのはやっぱり猫人族特有の猫耳と猫尻尾だ。

「猫耳と猫尻尾、ニャ? なんニャ、猫耳なら別になんの問題もないのニャ! 猫尻尾は、さすがにリートとはいえ、まだ触らせられないニャ」

後半部分を言うときはモジモジと恥ずかしそうにしていたナーニャさん。

猫人族にとって猫尻尾は大切な器官ってことなのかな?

「そうなんですか……」

「にゃんにゃら、前払いで今触ったっていいのニャ……ほれほれ」

そんなことをいいなら頭を差し出し、ピクピクと猫耳を揺らすナーニャさん。

近づいた彼女の髪からふわりと甘い匂いが漂ってきてドキドキしてしまう。

「……それじゃ、ちょっとだけ失礼します」

せっかくそう言ってくれてるんだし、触らせてもらうことにしよう。

僕は彼女の頭の上に手のひらを伸ばす。

──さわっ

「んにゃぅんっっ……」

うわっ。これめちゃくちゃ柔らかくて、フニフニでふかふかで、奥の方が少ししっとりで……気持ちいいな。

猫耳ってこんなに気持ちのいいものなのか。

──さわさわ

「にゃにゃんっ……リートっ、手つきがっ、にゃうんっ……」

──さわさわさわさわさわさわさわさわ

「にゃんっ、にゃにゃんっっ、だめっ、んにゃぁっっ、それ以上、されるとっ、向こう側にっっ……ストっ、ストップ、リートっっ!! ストオオオオオオップにゃあ!!!」

「あ……ごめんなさい……猫耳のあまりの気持ち良さに我を忘れてしまいました……」

渋々と名残惜しい猫耳から手を離す。

「うぅ……まさかリートがこんなテクを持ってるだにゃんて……汚されてしまったニャン……でも猫耳でこれにゃら、もっと敏感な猫尻尾を触られたら……ごくっ……」

「えっと、ナーニャさん?」

「にゃっっ! な、なんでもないニャ! それじゃ、前払いもしたんだし、トイレの件は期待してるのニャ!!! それじゃ約束どおり今日のここは私が払うにゃ」

「はい、ありがとうございます。ごちそうさまでした」

「いいのにゃ。私がまだ働けてるのもリートのおかげニャ」

そう言うとナーニャさんは夕食の支払いへと向かった。

 

 

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ーー No. PD

 

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