2−6 このスライムたちとできることってなんだろう

 

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「スラくん……『スライム繁殖師』ってなんなんだろうねえ……」

中庭を眺めながらそう呟く。

僕の足元にはそこが定位置と言わんばかりにふるふると震えているスラくんの姿がある。

「今のところ僕にできることは、職業スキル『スライム鑑定』を使って、スライムの詳細を知ること……」

『スライム鑑定』を使えば、スライムがどういう種類のスライムなのかがわかる。

それはスライムの外見を見ただけじゃわからないものだから、その筋の研究者でもいるならば泣いて喜ぶ情報なのかもしれない。

そしてスキルの情報欄の中ではスライムと自分の関係性もまたわかる。

それがわかることには一つのメリットがある。

「友好状態になってると、持ち運びしても攻撃されないんだよね……」

中庭でふるふると震えている3匹のスライムたち。

彼・彼女たちは、僕が裏山から運んで来たスライムたちだ。

結局餌付けを繰り返すというのが友好度を上げるポイントだったらしく、数日に渡って同じスライムに通い続けることで関係性を友好状態へ変えることができた。

そうして友好状態にまでなったスライムが外で死んでしまうのも忍びないので、僕は彼・彼女たちをうちの中庭へと連れ帰って来たのだ。

ちなみにスライムの友好度を上げることは職業経験にも関係していたようで、職業レベルが上がった。つまり、今では僕の職業は『スライム繁殖師  Lv.2』ということになる。

 

そんなわけで、今うちにいるスライムは4匹。

幸い街の外れにポツンとある僕の家の中庭は広いし、ご近所さんの家は一番近い家でも結構な距離がある。

中庭でスライムの数匹を飼ってても、街の人に怒られることはまずないはずだ。

「ポズちゃんは人に近づけないようにしないといけないけどな……」

毒キノコが好物の【ポイズンンスライム】のポズちゃん。

毒キノコの群生地を知っていたので、集めてたくさんあげてたらすぐに友好状態に変わった。

友好状態に変わったっても、スラくんの時のような劇的な変化はない。

普通のスライムはほとんど思考もしない単細胞生物。

ただ餌をくれる奴だから触ったくらいじゃ攻撃してこない、っていうくらいものだ。

 

「アドくんは友好状態にするの、大変だったよな……」

【アシッドスライム】のアドくんの好物は酸性の水。

酸性の水ってとりあえず酸っぱいものならいいのかなと、お酢をあげてみた。

結局それで正解だったみたいで、繰り返すこと数日でアドくんは友好状態に変化した。

何が大変だったってアドくんの見た目は普通のスライムと変わらないってこと。

裏山でアドくんを探すのに、『スライム鑑定』を使いまくる必要があった。

ちなみに最初の餌をあげた【アシッドスライム】とアドくんが同じ存在だったのかはイマイチ自信はない。

 

「ノビくんはその点楽だったよね……」

【ノービススライム】のノビくんを友好状態にするのは簡単だった。

ノビくんは例の動物の糞好きのスライム。

よっぽど糞が好きだったからなのか、コモンの【ノービススライム】は簡単に友好状態になるのか、1日の間に数個の糞を与えただけでノビくんを連れて帰ることができた。

ま、【ノービススライム】はあんまり特徴もないみたいだし、そんなに連れて帰ってきてもしょうがないけど。

 

そんな感じで中庭に3匹、うちの中にいることの多いスラくんを合わせて4匹のスライムが僕の家にはいる。

「この子たち特にお互いに仲良くしたりはしないんだよね……」

スラくんと、新しい3匹のスライム仲間たちは、特に交流したりとかはしていない。

スライムのそんな研究をしてる人がいるのかは知らないけど、群を作るスライムとかもいるんだろうか?

「ま、それはいいんだけど……問題は、この子たちを使って何をするか、ってとこだよね……」

【ポイズンスライム】や【アシッドスライム】。

一見すると戦闘に使えそうな存在にも思える。

《溶解毒液弾》や《溶解酸液弾》なんてスキルも持ってるわけだし、特殊スライムに攻撃されて冒険者が怪我を負うなんてこともある。

スライム仲間たちを引き連れてダンジョンに入り、ダンジョンモンスターを倒しながら一攫千金を狙う……なんてのはなかなかいい計画に思える。

だけど、このスライムたちには致命的な弱点がある。

「脆いんだよなあ……」

ここだけの話だが、友好状態にまで育てることができた【ポイズンスライム】はもう1匹いたのだ。

だけど、彼を裏庭に持って帰ってくる途中……

僕は誤って彼を地面に落としてしまった。

「まさか、あのくらいの衝撃で破裂して死んじゃうなんてね……」

そう、アンコモン種である【ポイズンスライム】でも、1メートルちょっとの高さから落としただけで死んじゃうのだ。

ましてや他の魔物に殴られでもしたら、一発であっさり昇天するにちがいない。

それどころか持ち運び中にぶつけでもしたら、その衝撃だけで死んでしまう可能性もある。

とてもじゃないけど、ダンジョン探索に使えそうには思えないのだ。

 

「でも……きっと他にも使い道、あるはずだよね……」

あと1年以内には、なんとかお金を稼げる方法を見つけないといけない。

僕は足元のスラくんに視線を落とす。

──ふるふる

スラくんはまるで僕の言葉を肯定するかのように、ふるふると震えていたのだった。

 

 

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ーー No. PD

 

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