2−2 『スライム繁殖師』について調べてみよう

 

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屋台で買った肉サンドイッチで昼食を済ませ、教会の図書室へと戻る。

「さて、次は『ユニーク職業』について調べないと……まずは神官様が勧めてくれたこの『ユニーク職業・その全て』を読むのがいいかな……っても薄いな、この本」

僕は神官様が最初に渡してくれた本を開く。

「なになに……『ユニーク職業』についてわかっていることは多くない。まずもってオクサルビ神が『ユニーク職業』を人々に授ける確率は極めて低く、これまでにそう多くの『ユニーク職業』が発見されてきたわけではない。また、『ユニーク職業』かと思われていた職業が、のちに繰り返し頻出するようになり、通常職業の一つであることが判明すると言ったケースもある。確定的な証拠はないが、オクサルビ神は定期的に新しい職業を追加しており、『ユニーク職業』の授与はその実地試験を兼ねている、というのはオクサルビ教会及び職業研究学会における有力な学説の一つである……」

へえ、なるほど。

その時は『ユニーク職業』だと思っても、後から同じ職業を得るって人が現れ始めたら、それは『ユニーク職業』ではなくなるってことになるのか。

「……その稀に見つかる『ユニーク職業』について、我々は長年の追跡調査を行ってきた。だが、『ユニーク職業』のタイプや性能に何かしらの系統的な傾向があるということはない。例えば、その職業タイプは多岐にわたる。戦闘系職業であることもあれば、生産系職業であることもある。どちらとも言い難い特殊な職業の場合もある……」

ふむふむ。

職業の系統は、なんでもありってことね。

「その職業の有用性についても個々の『ユニーク職業』次第である。『ユニーク職業』を得たからと言って悲観する必要もないが、喜ぶことができるかは蓋を開けて見なければわからない。職業名からある程度の推測は可能であるが、これもまたその『ユニーク職業』の能力を100%保証するものではない」

『スライム繁殖師』だったらスライムを繁殖するってことはできるんだろうけど、確かにそれで他に何ができるのかってのは謎だよな……

せめて『調教士』のような魔物の調教系スキルとか、『召喚士』のような魔物を操れるようなスキルが得られるといいのだけど。

「……であるからして、『ユニーク職業』に関する系統的な理解を深めることは不可能である。そう現時点では結論付けざるをえない。この書を終えるにあたり、我々が調査した個々の『ユニーク職業』の情報を記しておくので、『ユニーク職業』の研究・利用を考える読者各位に役立てていただければ幸いである」

結局『ユニーク職業』については、ほとんど何もわかってないってことか。

でも、この最後の情報は役に立つかもしれない。

個々の『ユニーク職業』をまとめた巻末資料に目を通していく。

 

ーーー

『遊び人』

『賭博士』や『奇術士』といったレア職業のテストのための『ユニーク職業』であったというのが職業研究学会の通説である。スキルは運要素に頼るランダム効果のものが多い。その多くは人々の生活や戦闘の役に立つようなものではなかったが、突如として極めて有効な効果をもつスキルを行使することもあったとされている。とはいえ、そのスキル効果が必要とされるその瞬間にその効果を発揮してくれるということはなかったため、『遊び人』は『ユニーク職業』の中でもハズレ職業の一つと位置付けられている。もちろん崇高たるオクサルビ神は何かしらの意図を持ってこの職業を人に授けたはずであろうが、矮小たる我々にはその意図を推し量ることは不可能なのである。

ーーー

……いきなりすごいのがきたな。

スキル効果がランダムな上に、いい効果が出る確率が低いのか。

『スライム繁殖師』は……さすがにこれよりはいいのじゃないだろうか……そう信じたい。

先を読み続けよう。

ふむふむ、『血管占い師』、『地底の住人』、『殺虫剤』に『自宅警備員』…………なんだかネタ職業がすごく多い気がするけど、確かにたまーにすごそうな名前の職業もあるんだよな。

そんな職業の説明を読み飛ばす中で、ひときわ僕の目をひく職業が見つかる。

 

ーーー

『ドラゴン繁殖師』

最強の魔物の一種ドラゴンを名に冠する職業。『ユニーク職業』の中でももっとも期待された職業の一つであった……のだが、『ドラゴン繁殖師』の職業を得た男は、当時ラグシル王国の沼地に巣を構えていたウオータードラゴンに職業スキルを利用した接触を試みたと言われており、あえなく討ち死にという結果に終わっている。スキルの詳細を記録することもなく使用者が亡くなったため、残念ながらこの職業に関する情報は残されていない。

ーーー

…………ってドラゴン繁殖する前に死んじゃったのかいっっ!!!

頭の中で使用者の男に向けて右手を振り抜く。

……とはいえ、系統的には間違いなく僕のと同じタイプの職業だろうな。

ウオータードラゴンにあっさり殺されたってことは、職業を持ってるだけで必ずしもその魔物と親和性が生まれるってわけではないのかな。

それとも最強種と言われるドラゴンが特別なだけ?

んー……わからないけれど、職業レベルを上げたり、職業スキルを得る前に慌ててスライムに接触したりしないほうがいいのかな?

とは言ってもスライムはドラゴンと違って最弱の魔物だから死ぬってことは……やめやめ、とりあえずは全部の職業をチェックしてみよう。

 

僕は一旦思考を止めて、本の続きを読み込んでいく。

1時間ほどで全ての『ユニーク職業』を読み切ることができた。

「……他には、特に有用そうな情報はなかったかな。それじゃ、あとはいくつか普通の職業の書籍も読んでおくか」

僕は膨大にある、普通の職業の本棚に向かったのだった。

 

 

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ーー No. PD

 

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