3−6 魔王様と前回勇者の家

 

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慣れない山登りを続けることしばらく。

火山らしく岩石なんかが転がってる風景が続いてたのだけど、小さな川に草原、雑木林の広がるゾーンに入る。

草原をしばらく歩き雑木林に近づいたところでアシュリーが口を開く。

「ここじゃな……ほれ、あれがそうじゃ」

アシュリーが指差したのは、木造りの建物だった。

木目を生かしたログハウスって感じで、サイズはほどほどの大きさ。

軽井沢とか、日本の別荘地にあるようなペンションって感じだ。

「ここが、ハジメさんが住んでたっていう……」

「そうじゃ……ハジメのプライベートハウスじゃな。ハジメはこのあたりにいるときには我の別荘に住んでいることが多かったのじゃが、ハジメにもプライベートな時間は必要じゃからの……まあ、それは良いのじゃが、これが問題のものじゃ」

そう言ってアシュリーが指をさしたのは、ドアを塞ぐようについた大きな丸い盾のようなものだった。

「ハジメは変な魔道具を創るのに凝っておっての……この盾は見ての通りこの扉をふさいでいるものなのじゃが、開けるにはたくさんのなぞかけを解く必要があっての。我も何度も試したのじゃが、最後まで答え切ることはついぞ不可能だったのじゃ……」

「無理やり開けるってのは?」

「開けるってだけなら我には可能なのじゃが、自爆装置が起動するのじゃ。建物ごと全部吹っ飛んでしまうの。それはこの扉から入らずに、窓なんかを破った場合も同じじゃな」

なるほど。

一見したところ普通の家だから、窓なんかからは簡単に進入できそうに見える。

だけど、それをすると家ごと自爆するってことなのか。

「そんなガバガバな設定で、よく今まで無事でしたね?」

「火龍のやつが住んでおるこの火山までこようなんてやつは、魔族だろうと魔物だろうとそうそういないのじゃ。火龍のやつも我の匂いのするこの場所には来ない。それに建物自体もそれなりの力を持っていなければ壊すこともできんのじゃ……今のお主じゃ到底無理じゃな」

「なるほど。そういう意味では安心な場所なんですね」

「のじゃ……それで、これを開けるにはじゃな……こうして……」

アシュリーが盾の真ん中に手のひらを当てる。

すると……

ーー認証を開始します。第一問『異世界勇者ハジメの出身地はどこでしょう?』

盾のあたりからそんな音声が響く。

若々しい男性の声だ。

「これがハジメの声じゃな。こんな感じの問題に答えていくのじゃ。この問題の答えは我が知っておる。”日本”の”東京”じゃ」

ーー正解です。第二問へ移ります。『ハジメの好物の親子丼は鶏肉と鶏卵で作られますが、他人丼は何と何で作るでしょうか?』

「我はわからんのじゃ……タカシはわかるかの?」

「ええ。他人丼は作ったことがあります……ここでこのまま喋ればいいのですよね?」

「そうじゃ。正解の単語があれば、正解と見なされるのじゃ」

「わかりました……”豚肉”と”鶏卵”です」

ーー正解です。第三問へ移ります。『ハジメをこの世界に召喚した国はどこの国でしょうか?」

「これは、我がわかるのじゃ……タカシの時と同じで、”ディノク”じゃな」

ーー正解です。

そんな感じでクイズに答える時間はしばらく続いたのだった。

 

 

 

アシュリーと僕の知識でなんとか十問ほどのクイズに正解したあとだった……

ーー正解です。それでは最終問題へ移ります。

いよいよ、最終問題へと突入する。

ーー『アルミ缶の上にあるものは?』

「くぁあっっ!!!! せっかく良い感じで進んでたのに、最終問題でこれがきてしまったのじゃ。この問題はよく出る問題なんじゃが、正解のためのヒントがなにもないのじゃ……我には全くアイディがないのじゃ……タカシにも、これは無理じゃろう?」

嘆くアシュリーだけど……これって、もしかしなくても、正解はあれなんじゃないのか?

「……………………”みかん”?」

半信半疑で、その単語を口にしてみる。

「みかん、ってなんで、ここで果物の名前なんぞが出て来るのじゃ?」

ーー正解です。ハジメのプライベートハウスへの訪問を許可します。

「っっって、それが正解っっ!?!? なんでじゃっっ!?」

驚愕するアシュリーをよそに、大きな盾がシュッと姿を消す。

「……その……これ、元の世界のダジャレみたいなものでして……語呂合わせで『アルミ缶の上にあるみかん』。日本人なら、一度は聞いたことのあるフレーズなんですが……」

この世界ではそもそもにして言葉が違う。

これに答えろってのは流石に酷だろう。

「なんじゃそれは……さすがに、それは我には答えようがないのじゃ……」

アシュリーががっくしと肩を落とす。

「……そうですね。若しかしたら、同郷の人間がアシュリーと一緒に来るってことが鍵になってたのかもしれませんね。僕だけじゃわからない問題もありましたし……」

「そうじゃな……ま、ハジメがそうした理由は、きっとこの中にあるのじゃろ。よし、入ってみるかの」

アシュリーはそういうと、ハジメさんのプライベートハウスへの扉を開いたのだった。

 

 

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ーー No. PD

 

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